2024.11.25
Adobe IllustratorとInDesignで合成フォントを使いこなす!基本設定と選び方のコツ
「合成フォント」は、Adobe IllustratorとInDesignに搭載されている、洗練されたタイポグラフィを実現できる大変便利な機能です。和文フォントと欧文フォントの混植や、「かな」のみ変更して従来のフォントの印象をガラリと変えることもできます。デザインをしていて文字の表現が何か物足りない時など、面倒臭いなどと言わず、取り入れてみることをお勧めします。思いがけない巡り合わせがあるかもしれません。
前回の記事では、FigmaやWeb制作における「和欧混植」について紹介しましたが、細かな調整が難しいという課題があります。それに対して、IllustratorやInDesignの合成フォントツールは、印刷物やPDFなど高精度なデザインを必要とする場面で、フォント選びから文字の調整まで納得いくまでコントロールすることが可能です。
印刷物デザインでの「合成フォント」の活用
「和欧混植」を印刷物に行う際、「合成フォント」機能を活用することで、フォント選定や文字の微調整を高い精度で行えます。
和文フォントと欧文フォントを一つのスタイルとして統一でき、見た目の一貫性が保て、問題となるサイズやベースラインのズレを簡単に補正できます。印刷物でなくてもPDFや、WEBでも画像で出力されるものであれば、IllustratorとInDesignを介して活用ができます。
「合成フォント」の概要
- 文字種別ごとのフォント指定
例えば、漢字には「明朝体」、カナには「ゴシック体」、英数字には「セリフフォント」を割り当てるなど、細かな調整が可能です。また、平仮名・カタカナしか無いフォントに、別の漢字フォントを当てて総合書体のように使うことができます。 - ベースラインや文字サイズの調整可能
同じ級数でも和文と欧文でサイズやベースラインが異なり、単に並べただけだとガタガタしてしまいます。フォントごとにサイズや位置を調整して、違和感の無い文字組みが実現できます。和文と欧文が自然に調和し、完成度の高いタイポグラフィが可能になります。 - 設定の保存と再利用
複製してバリエーション展開も容易で、一度作成した合成フォントは保存でき、他のプロジェクトでも簡単に再利用できます。
Illustrator/InDesignとWeb制作の違い
Figmaでは合成フォント機能が無い為、和欧混植を完全に再現するのが難しいのが現状です。しかし、『Japanese Font Mixer』のようなプラグインを使うことで、ある程度の代替手段を得られます(ベースラインや文字サイズの設定・調整は対応していません)。
Web制作では、CSSを使って和欧混植を実現しますが、ベースラインの調整などは難しく、やるとなると手間がかかることが多いです。
Illustrator/InDesignでの合成フォント設定方法
IllustratorもInDesignもパネルの表示が異なるくらいで、基本の手順は同じです。
手順(Illustrator・InDesign共通)
1.「合成フォント」パネルを開く
合成フォントを使用するファイルを開き、「書式」メニューから「合成フォント」を選択し、「合成フォント」パネルを呼び出します。(下図はInDesignの画面)
2. 新規作成と命名
パネル上の、「新規」ボタンを押して、元とするセットがあれば選び(無ければデフォルト)、合成フォントにお好みで名前をつけます。
2. 各文字種ごとのフォント指定
パネル上で、「漢字」「かな」「全角約物」「全角記号」「半角欧文」「半角数字」のそれぞれに使いたいフォントを指定します。
和文フォントに指定する項目…漢字、かな、全角約物 (例:ヒラギノ明朝 Pro、新ゴ Pro)
欧文フォントに指定する項目…半角欧文、半角数字 (例:Times New Roman、Helvetivca Neue)
「全角約物」と「全角記号」の違いを理解しておくと、フォントの選定がよりスムーズになります。
全角約物…全角の句点、読点、括弧類、ダッシュ、クオーテーションマーク、エクスクラメーションマーク、クエスチョンマークなど。
全角記号…それ以外の全角記号類、および全角英数字を指します。
「特例文字」ボタンを押すと、さらに細かい記号・字ごとの設定ができますが、マニアックなので省略します。
※左がInDesign、右がIllustratorのパネルです(ともに2025)。レイアウトが違います。
3. 文字サイズの調整
サンプルを見ながら、欧文、半角数字などのサイズを「サイズ」列のパーセンテージを増減させ和文と近いサイズ感になるよう調整していきます。基本的には、漢字・かな・全角約物・全角記号は100%のままで問題ありません。※かな書体(ひら・カタのみのフォント)を除く。
字面や仮想ボティ、アセント・ディセントなどのガイド線を表示・非表示を切り替えできます。また、サンプルは縦書き表示にも対応しています(InDesignのみ)。
4. ベースラインの調整
サンプルを見ながら、欧文、半角数字などの「ベースライン」列のパーセンテージで上下の位置を調整します。値が増えると標準より字が上に、マイナスになると下に下がっていきます。
5. 垂直比率・水平比率の調整(必要な場合)
必要であれば、垂直比率と水平比率のパーセンテージを変更します。垂直比率が平体(縦のサイズ増減)、水平比率が長体(横のサイズ増減)です。特に目的が無いなら、文字のデザインが崩れるので基本変更はしなくて大丈夫です。一番右の、「文字中央で拡大・縮小」も同様です。
6. 保存と適用
保存ボタンを押して完成です。開いていたファイルに保存されました。適用したいテキストを選択して、文字パネルのフォントから適用ができます。
↑フォントの一覧に、作った合成フォントが出現!
合成フォントの選び方のコツ
合成フォントを設定する際、以下のポイントを押さえておけば、デザイン全体に統一感とバランスの取れた玄人感のある印象を与えられます。
和文と欧文の「雰囲気」を合わせる
ゴシック体(例:ヒラギノ角ゴシック) + サンセリフ体(例:Helvetica)
明朝体(例:ヒラギノ明朝 Pro) + セリフ体(例:Times New Roman)
ウェイトを揃える
和文と欧文でフォントのウェイト(太さ)が異なると、片方が目立ちすぎたり、逆に埋もれてしまったりします。同じくらいのウェイトを選ぶことで、バランスが良くなります。
例:
和文:ヒラギノ明朝 Pro(W6)、欧文:Times New Roman(Regular)
フォント名に付くRやM、Bなど、ウェイト記号が同じでも、それぞれのフォントサイズを調整することで、見た目の太さが揃わなくなることもあるので注意してください。
例:
和文:游ゴシックM、欧文:Roboto M
本文と見出しで役割を分ける
本文のような「読ませる」文章では、視認性を優先したシンプルなフォントが適しています。一方、見出しやバナーでは、デザイン性やインパクトを重視して装飾性の高いフォントを選ぶのも良いでしょう。
例:
本文用: 游ゴシックM + Roboto L
見出し用: 凸版文久見出ゴStd + DIN
まとめ
「合成フォント」を活用し細かく調整をすることで、和欧混植がより洗練され、プロフェッショナルなデザインを実現できますが、数あるフォントからその結果になる組み合わせに持っていくまで、すんなり決まらず苦労することもあるかもしれません。
しかし、ディティールにこだわった印刷物や高品質なPDF制作に特にお勧めしたい、デザインワークに欠かせない機能です。ぜひ活用して、オリジナルのタイポグラフィ表現に挑戦してみてください!
以上、Maromaroのfutaでした。