東京都府中市のWeb制作会社が運営するブログです。

2016.08.29

hoshida

シン・ゴジラから学ぶデザインの大切な工程

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hoshidaです。

「シン・ゴジラ」。衝撃の作品でした。

ゴジラへの恐怖と、ほんの千円ちょっとでこんなに本格的な恐怖や興奮を味わえていいのか?!という驚きと、衰退していくばかりだと思っていた日本のコンテンツ業界に秘められたポテンシャルへの期待で、上映後放心状態に。しばらくツイッターで「シン・ゴジラ…」「シン・ゴジラすごい…」などとしかつぶやけなくなるほどでした。

まちがいなく今後名作として語り継がれるであろうシン・ゴジラですが、私はその制作プロセスに、デザインを含むすべての制作において共通する重要なテクニックをみました。本記事ではそれを解説し、日頃のデザインワークへの取り込み方を提示しています。

なお本記事に核心的なネタバレはありませんが、細かい内容には触れていきますので事前情報を遮断して作品を楽しみたい未見の方はご注意ください。

ネタバレ防止スペース ~全く関係のない画像を添えて~

train_blue
train_green
train_orange
train_red

 

 

 

それでは以下より本題です。

驚くべきリアリティを支える徹底的なリサーチ

シン・ゴジラのパンフレットには、助監督のコメントとして以下のようなことが書かれています。

映画のようなことが起きたら、どういう組織が立ち上がるのか? […] 3.11の時の記録資料が膨大にあったので読み込みました

各省庁の災害担当、広報担当に質問リストをお渡しし […] 数回のやり取りを経て、着地点を見つけていった

取材をした省庁は、国土交通省、環境省、原子力規制庁、内閣官房、首相官邸、海上保安庁、防衛省、経済産業省、総務省消防庁、東京都庁、東京消防庁、警視庁、神奈川県警、木更津消防など

シン・ゴジラでは、ゴジラという災害に対して日本政府が様々な対策を講じる模様を中心にして物語が進みます。総理大臣や閣僚達が会議をしたり、対策本部を立ち上げたり、テレビで会見したりします。その様子にすさまじい説得力があります。「へ〜。記者会見の前には密室でこういう会議をしてるんだ〜」と、フィクションなのに自然にそこに描かれているものを現実のものと受け入れてしまいます

このリアリティを成り立たせているのが、上に引用したようなリサーチです。

シン・ゴジラにおけるリアリティのある要素は、政府の動向だけにとどまりません。自衛隊が使用している武器とか、政府施設の室内の内装とか、災害対策本部で使用されている事務用品とか、緊急時に政府が解放した free Wi-Fi の名前とか、とにかく何から何までリアリティがあります。そしてそれらを裏打ちしているのが、各スタッフによる多方面への膨大なリサーチなのです。

優れたデザインは透明である

制作全般に言えることですが、デザインが優れていると、そのテクニックは見えなくなります。

優れたデザインのイスは、とても座り心地が良く長時間座っていても疲れにくいですが、なぜそのイスが座り心地が良いのかは使用者の意識には上りません。逆に、お尻の痛くなるイスは、ストレスという形でそのデザインが意識されます。適切につくられたデザインは、人の意識に上ることなく仕事を果たします。優れたデザインは透明なのです。

シン・ゴジラにおいても、全体的なリアリティそのものは意識されることはなく、ただ自然に見えます。そのため、何の違和感もなく物語に没頭することができるのです。つまり、シン・ゴジラのリアリティは、非常に良く”デザイン”されていると言うことができます。

この優れた透明なデザインを作り上げる方法の一つが、徹底的なリサーチです。

くまモンの生みの親で有名なアートディレクターの水野学は、その仕事において徹底的なリサーチを行います。水野学がリブランディングし、売り上げを数倍にした「TENERITA」というタオルや衣類のブランドがあります。その商品に刻むエンブレムをデザインする際、鳥の絵柄を起用することになったのですが、どの種類の鳥を描くのかを決定するために専門の学者に問い合わせるなどのリサーチを行っています。

また、神奈川県を走る私鉄である相鉄線のブランドアッププロジェクトで駅舎や車両の外装をデザインする仕事においても、駅構内の汚れを採取したり、全国の電車の色やデザイン、相鉄線や神奈川県の歴史を調査した末にそれぞれのデザインに落とし込んでいます。

水野学はそのような調査の工程を「シズル」を出すためのものとして行っています。「シズル」とは「らしさ」のことであり、つまりはリアリティによる説得力ということです。シン・ゴジラも水野学のブランディングの仕事も、同じ工程を経て作品のクオリティを上げていると言えます。もちろん水野学に限らず、大きなデザインプロジェクトには背後に必ずリサーチの工程があります。一見華やかにみえるデザインの仕事ですが、それらの裏には地味で地道なリサーチ作業があるのです。

デザインフローにリサーチを入れる

このリサーチをデザインフローに入れることで、デザインのクオリティが上がるのではないでしょうか。例えばケーキ屋さんのWebサイトを作るとします。普通事前にチェックするのは、他のケーキ屋さんのWebサイトくらいではないでしょうか。そこへ、時間をとって以下のようなことを調べてみます。

  • ケーキの歴史
  • 周辺にある他のケーキ屋
  • 様々な飲食店やお菓子屋のWebサイト

すると、以下のようなことが見えてきます。

  • クライアントのケーキ屋は、伝統的なのか、先進的なのか
  • 他のケーキ屋からどのように差別化できるのか
  • ユーザーはケーキ屋のWebサイトに何を求めるのか

このような根拠に基づき作成していけば、より「優れた」デザインを行うことができます。目的が明確になることで作業スピードも上がり、クライアントと共有すれば修正のリスクも減るでしょう。ぜひ、デザインの工程に徹底的なリサーチを加えてみてください。

 

以上です。いやあ記事を書いていたらもう一回見に行きたくなってきました。もう二回見たんですけどね。

それにしても、シン・ゴジラは内容もさることながら、ここまでの作品を低予算かつ超短期間で作り上げたということも驚きです。もし作品を見る機会があれば、そのあたりの裏話が満載のパンフレットも併せて読むことをお勧めします。制作する人にとってためになることがたくさん書かれています。

ではでは

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